こんにちは! 「教材の力」で人材育成の課題を解決する教材戦略ラボの矢澤です。
私は普段、教育サービスを展開される事業者様向けに、教育プログラム(講座や研修)の構築、メソッドの体系化、カリキュラム設計、テキスト・ワークブック・マニュアル等の制作のお手伝いをしています。
今日のコラムのテーマはこちら。
教材の質を上げるための「ディレクション」のトレーニング
先日「教材を教材たらしめる要素って?」というコラムをお届けしました。
その中でこんなことをお伝えしました。
資料と教材の違い、私はこのように考えています。
「教材にはディレクションがある!」
(資料には必ずしもない)
教材における「ディレクション」(指示)とは、例えばこういうものです。
「この文章を読みましょう」
「この内容を暗記しましょう」
「この事例についてディスカッションしましょう」
「この問いについて考えたことを記入しましょう」
「この手順に沿ってやってみましょう」
「この事例集を参考にしましょう」
私はこのような「指示」があって、教材が教材になり得ると考えています。
これらディレクションの目的は、「受講生に然るべき行動を促すこと」です。
ですが、「然るべき行動を促すためのディレクション」って、意外と難しかったりします。
ただディレクションすれば良いというわけではなく、「的確なディレクション」を行う必要があります。
そこで今日は「教材の質を上げるためのディレクションのトレーニング方法」を紹介したいと思います。
とても地味でマニアックな方法ですが、講座や研修を提供されている方は、常日頃からこのような目線を持つことで「教育サービス脳」が鍛えられますので、ぜひやってみてください!
教材の質を上げるための「ディレクション」のトレーニング
突然ですが、下の写真を見てください。
先日私が立ち寄ったカフェのテーブルに置かれていた案内サインです。
限られた飲食スペースを効率よく使うために考えられた案内だと思います。
お客様が不快な想いをされないように… と、とても丁寧で控えめな表現でお店側の「お願い(指示)」を伝えようとしているところに、温かくて優しい心遣いが感じられます。
「お願い」という形をとっていますが、これも1つの「ディレクション」です。
ここではこの案内サインを題材に、以下のことを考えてみましょう。
1)わかりやすいか?
2)指示された行動をすぐに取れそうか?
3)(これが教材内の指示だったら)他にどんな表現ができそうか?
実はこれらの問いに答えることが、「教材の質を上げるための効果的なトレーニング」になります。
私は職業柄、このような「~してください」というサインを見ると、無意識でやってしまいます^^
上の3つの問いを通して、皆さんはどんなことを感じ(考え)ましたか?
私の場合はこうでした。
1)案内はわかりやすい?
→わかりにくい! 文章が長いのと、丁寧語が理解を妨げるように感じる。
2)指示された行動をすぐに取れた?
→すぐには行動できなかった。意味を理解してレジに向かうまでに一瞬の「間」があった。
3)他にどんな表現ができそう?
→色々考えられるけれど…(以下、ブレスト)
A:「ご着席前に 注文をお願いします」
(このサインを見ている人は今まさに着席しようとしているから、「ご着席前に」を強調)
B:「先に注文してから ご着席ください」
(シンプルに手順・順番を示す)
C:「注文された方から順に お席をご案内します」
(これはまどろっこしい表現かな…ボツ!)
D:「先にご注文ください!」
(一番大切な情報だけを示す)
E:「Step①ご注文 → Step②ご着席」
(アイコンやイラストで示す)
・
・
・
と、こんな感じでブレストしてみました^^
もちろん正解はありません。
ですが、「わかりやすい指示」に共通する要素はあります。
受講生をスムーズに学習に誘うために
教材内のディレクションは…
- できるだけ少ない文字数で端的に!
- できるだけ具体的に!
- 誤解(別の解釈の余地)がないように!
- 丁寧語/尊敬語/謙譲語は使わなくてOK
- 語尾は「~してください」「~しよう」「〜しましょう」が◎
- アイキャッチを上手に使う(アイコンやキーワードなど)
が鉄則です。
先ほどのカフェの案内サインであれば、例えばこんな感じでしょうか。
いかがでしょう?
このほうが「自分は何をするべきか?」が明確で、すぐに行動に移せる気がしませんか?^^
この例では、元の案内にはなかった「レジで」という具体的な情報を加えるだけで、取るべき行動が断然イメージしやすくなります。
「わかりやすいディレクション」を心がけて、受講生を気持ちよくスムーズに学習に誘う。
見落としがちですが、教材作りにおいては大切なポイントです。
教材の質を高めるためのトレーニング。
ぜひ皆さんも、生活する中で「〜〜してください」という案内サインを目にしたら、ぜひこのようなトレーニングを試してみましょう。
※補足
この記事は、特定のお店 および その案内サインの内容を批判するものではありません。「教材に置き換えると…」という視点で、1つの題材として取り上げさせていただきました。
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