文章術のデフォルト=エモーショナルライティング、ではない
こんにちは。「教材の力」で学びの場の課題を解決する教材戦略ラボの矢澤です。
私は普段、「学びの場」を主催するセミナー講師やインストラクターの方向けに、教材(主にはテキストやワークブックなどの冊子型教材)の制作プロデュースをしています。
クライアントさんのほとんどは、「自分オリジナルのメソッドや理論を教育コンテンツ化&教材化したい人」。そのノウハウは必ずしも言語化・体系化されているわけではないので、教材制作を進めていく過程で、少しずつ言語化と体系化に取り組んでいきます。
その中でも「文章化」に課題を抱えている方は少なくありません。
教材づくりの際の原稿は、基本、クライアントさんご自身で入力してもらうのですが、こちらから何もディレクションを行わないと、約半数の方が「エモーショナルライティング」と呼ばれる文章術で原稿を書かれます。
おそらくは皆さん無意識だと思うのですが、SNS全盛の今、「自分オリジナルのノウハウをコンテンツ化して販売しよう」と考える方々にとってのライティングスキルのデフォルトが、「エモーショナルライティング」になってしまっているようにも感じます。
文章術やライティングスキルは、教材づくりには欠かせないもの。
ですが、このように「文章が書けるから」といって、良い教材が作れるとは限らないのです。
この記事では、教材づくりに必要なライティングスキルについて解説したいと思います。
教材に必要なのはロジカルライティング
文章術には、大きく分けて以下の2種類があります。
- ロジカルライティング
- エモーショナルライティング
1つ目の「ロジカルライティング」は、物事をわかりやすく説明し、読み手に左脳で理解させやすい論理的な文章術のこと。私たちが学校で習ったり、ビジネス文書でよく使う(はずの)「総論・各論・結論(まとめ)」の構成に代表される書き方です。短い時間で全体像が把握できます。
読み手としては、最初にテーマやゴールが示されるので「これから語られることが何なのか?」「何を目的としたものなのか?」が明確で、読んだ内容を自分の頭の中で咀嚼しながら整理できます。最終的には、「なるほど!」「わかった!」「理解できた!」という反応につながる文章です。こうして咀嚼・理解した内容は、あとあとまで記憶に残りやすくなります。
一方の「エモーショナルライティング」は、感情を揺さぶることで行動を促しやすい文章術のこと。「セールスライティング」に代表されるように、SNSやブログ、LP(ランディングページ)やセールスレター等でモノやサービスの購入(意思決定)を促すときに有効な文章術で、「悩みの共感」からスタートして、「結論」は最後に…というのが一般的な構成です。(詳しい説明はここでは割愛します)
このように説明すると明らかだと思いますが、講座や研修・セミナー・ワークショップなどの「学びの場」で使われる【教材づくり】に必要なのは、前者の「ロジカルライティング」のほうです。
「学びの場」にはそれぞれ到達目標(ゴール)があり、受講生にはそのゴールに至るために必要な「ある一定の知識や情報」を共有し、習得してもらう必要があります。それが実現できるのがロジカルライティング。
この役割は「エモーショナルライティング」では果たせません。
エモーショナルライティングで教材を作るとどうなるか
仮に、エモーショナルライティングを使って教材(テキストなど)を書くとどうなるか?というと…
読んでいる途中で「何を学んでいるのか」がよくわからなくなる(ゴールが不明確で、向かうべき方向がわからなくなる)
なんとなく頭に入った気もするけれど、とどまることなく、そのまま流れ出ていってしまう(その場ではわかったつもりになるが、知識として定着しない・蓄積されない)
「何を学んだか?」を問われても明確に答えられない(振り返りや再現ができない)
(状況によっては)なんとなく胡散臭さすら漂いはじめる(自分が一体何にお金を払ったのかが見えづらくなくなる)
そんな受講生の体験が、そのままその講師や学びの場の評価となってしまう…そんなリスクを抱えてしまう可能性があるものです。
「そんな…」と思うかもしれませんが、実は、このような教材は巷に溢れています。
大切なのは目的に応じて文章術を使い分けること
ここまで読んで、ひょっとしたら「普段エモーショナルライティングで資料を作ってるけど、ちゃんと成果が出てるよ?」と思われる方もいるかもしれません。
そこで1つ質問ですが、それは「どんな場」で配る「どんな資料」でしょうか? そして、その成果とは「誰にとっての成果」でしょうか?
ですが、その資料をそのまま本命商品の教材に転用できるかというと、残念ながらなり得ません。そもそもその資料(文章)を使って実現しようとしていること(=目的)が違うからです。
また、「誰にとっての成果か?」によっても見方は変わります。
「本命商品を購入してもらうため」に必要な文章と、「実際に本命商品を購入した受講生が、講座のゴールに到達するため(受講生が実際に成果を出すため)」に必要な文章。前者は「自分(講師や学びの場の主催者)」のためで、後者は「受講生」のためのものです。
大切なのは、「目的」です。
文章を書くときは、その文章や資料が「何を目的としたものなのか?」を考える
自分にとっての販売目的であれば、エモーショナルライティングを使う
受講生にとっての知識の習得や定着が目的であれば、ロジカルライティングを使う
意外と「普段自分が書いている文章が、どちらの文章なのか」に無意識的な方が多いと思うので、これを意識して使い分けるだけで、目的が叶いやすくなります。
「受講生の理解度&知識の定着度」を高めるための教材戦略的工夫
最後に、ロジカルライティングの基本をおさらいしましょう。
販売目的ではない「学びの場」で使う資料づくり(教材づくり)に必須の構成と書き方です。
基本は「総論→各論→結論(まとめ)」です。
▼01:総論:
この最初のパートでは、「これから説明すること」の全体感を説明します。ポイントや項目が複数ある場合は、ここでその数を示します。
例えば「ポイントは3つあります」「全部で5段階のレベルがあります」「手順は以下の8つです」など、あらかじめ「いくつのことについて説明するか」を最初に伝えます。
「より教材っぽくしたい」という場合は、ここに「この項目を学ぶ目的」や「狙い」のようなものを入れると良いです。
▼02:各論:
総論パートで紹介した「1つ1つの項目」について詳しく説明していきます。その際「今何番目について説明しているか」がわかるように、各項目の見出しや文章の頭に番号を振りましょう。
例)
ポイント1、2、3
手順1、2、3
パターンA、B、C …など
この各論パートをよりわかりやすくするためには、「各項目を説明する“型” を統一する」という方法があります。
例)パターンA、B、Cに関する説明をするときは
【パターンAの説明】Aの特徴 →使うシーン →使い方 →事例
【パターンBの説明】Bの特徴 →使うシーン →使い方 →事例
【パターンCの説明】Cの特徴 …同上…
もちろん、すべての項目が上の例のような並列のものばかりではないので、この点については「可能な範囲で統一する」で十分です。
このような「型」を作ることで、受講生の中には読んだり学んだりする「リズム」ができて、頭の中に「情報や知識を収納する引き出し」と「その中の間仕切り」を作りやすくなります。結果、その知識や情報が定着しやすくなるのです。
▼03:結論(まとめ)
総論と各論の総括パートです。全体を通して説明した内容の要点をまとめます。
「より教材っぽく」するためには、このパートに
「確認テスト」や「ミニテスト」などの形で、「ここで説明した重要ポイントをきちんと理解したか?」を確認する内容を入れる
「いちばん印象に残ったことは何ですか?」「明日からすぐに活かせそうなことは何ですか?」などの形で、ここで説明した内容を受講生一人一人に「自分ごと化」してもらうための「問いかけ」を入れる
などの工夫もおすすめです。
以上、教材づくりにエモーショナルライティングを使ってはいけない理由と、教材づくりに必要なロジカルライティングの基本と教材的工夫について紹介しました。
株式会社びぶりあでは、受講生が理解しやすい教材のテンプレートを、クライアントさんお一人お一人の「コンテンツの特徴」と「ライティングスキル」を踏まえて、オリジナルで制作し、提供しています。
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